古文で読む『源氏物語』感想37. 明石 Ⅲ 〜日記をつけ始めた紫の上

本日のあらすじ

明石で一人寝が寂しくなってきた源氏は入道に「娘をこっそり参上させて」と頼むも、当の明石の君は自己卑下から断り続ける。自分から明石の君の元に行くことは考えもしなかった源氏だが、ある夜入道から娘の所にいらっしゃいと招待され、正装して出かけていく。聞いていなかった明石の君は驚くが、源氏と近くで歌を読みかわし、なし崩し的に関係が始まる。

紫の上に対しては隠し事ができず、手紙で先に白状する源氏。紫の上の恨みを思うと明石の君の元への足も遠のき、明石の君は「やっぱ私なんて」と嘆く。

京では帝、弘徽殿大后の病も治らず、譲位も現実味を帯びてくる。春宮の後ろ盾の源氏が追放されたままではよくないと、朱雀帝は珍しく大后の反対を押し切り、帰京の宣旨(命令)を下す。源氏にはうれしい知らせのはずが、明石の君との別れを思うと彼女が可哀想に。しかも明石の君は妊娠していた。

1.コンプレックスを抱える者同士

今回展開早いですね。

新しい女性との関係が始まるたびに、また不同意性交じゃねえだろうなと不安になるんですが、今回また微妙な感じ。気付くと関係持って夜が明けています。ただ今回源氏は「力づくというわけにはいかない」(その理由はともかく)と考えていたので、力づくではないんでしょう。

明石の君と源氏との関係がこれまでスムーズにいかなかったのは、明石の君のコンプレックスもありますが、源氏がそれを誤解していたところもあるようです。

明石の君は自分の身分の低さから、かりそめに源氏との関係が始まれば後で惨めな思いをするだけだと(割と正確に)予見していて、また自分は源氏と釣り合わないとも考えていたために言ってみれば「遠慮」し続けていたのですが、

源氏はそんな明石の君を身分的にナメながらも「気高く育てられた人だから、都から追放された私を見下しているのかも」と現状からのコンプレックスが湧いて、素直に言い寄れない状態。それもあって「こっそり参上するなら相手をしてやろう」なんて居丈高に構えてたわけですかね。…いや感じ悪いわ。ただそのコンプレックスゆえに、今回力づくで関係を求めるような、がっついた姿勢は見せられなかったようで。

それでも近くで話をしていると、お互いに好感が持てたようで(明石の君は六条御息所に雰囲気が似ているらしい)、意地の張り合いも忘れることができたようです。

2.「あやまち」にどう対処するか

人間誰でも失敗はあるから、失敗しないことよりも、失敗にどう対処するかが大切…なんて中学の先生が言ってたような記憶がありますが。

源氏は明石の君と関係を持った後、こともあろうか紫の上に報告します。

すんなや!

つまらないことでも隠し立てする仲じゃないからとか何とか言ってますけど、隠すのが辛いのはお前だけでだな、打ち明けられた紫の上はこれまでになかった悩みを抱えることになるわけで。彼女に悪いことしたのは確かなんだから、抱え込む程度の辛さは甘受せえよ。。

しかもその報告が正直かと言えば、ことさら「相手はつまんない女でしてね」(だから気にしないでね)的な言い草。そんなら尚更報告するなや!そして明石の君に対してますます感じ悪い。これLINEだったら送り間違いの大失敗が心配になります。

とは言え明石の君が妊娠し、その後の展開からしてもいずれ紫の上の耳に入らないわけにはいかないのですが…

3.紫上日記

報告の結果やはり恨みを隠せない紫の上からの返事があり、気になって明石の君のもとに通えなくなった源氏。結果みんなして嘆くことに。

…っていうか、そうか。源氏が報告したのは紫の上が「寂しいから仕方ないよね、許してあげる」と返してくれるのを期待したからだったのかもしれない。そして気持ちも軽く明石の君の元に通おうと。。。どこまで甘えてんだお前。

とにかくステイホームになっちゃった源氏はこの頃、絵を描き出します。後の「絵合」に登場する絵でしょうね。絵を描いて、余白に何か書きつけて、別の余白を残したまま紫の上に送って、紫の上がその余白に何か書きつけて返してくれることを期待します。交換日記みたいやな。このエピソードだけ切り取ればいじらしい男なんだが。

面白いことに紫の上も同時期に絵を描き始めたそうです。そして日記も書き始めたそう。そりゃ日記も書くよ。

考えごとや悩みごとが多い時に日記をつける人っているんじゃないでしょうか。私もそうですが。日記帳が白いのは元気な証拠、みたいな。

あと、後に訴訟とか起こすこと考えると記録は大事ですよね。いや現代の話。

次回で多分「明石」終わりです。源氏帰京。