古文で読む『源氏物語』感想35. 明石 Ⅰ 〜 父の目を通して源氏を垣間見る明石の君

本日のあらすじ

前巻から引き続き嵐が止まず、夢の中では連日竜王の使者が周囲をうろついている。雷で屋敷の一部が焼け、源氏は調理用の建物に居所を移す。そこで夢に故桐壺帝が現れ、源氏を慰め、朱雀帝にちょっと物申してくると去っていく。ようやく暴風が止むと、明石の入道が船で現れる。神仏のお告げで源氏を迎えに来たという。須磨の屋敷も住める状態ではなく、入道の言葉に甘えて共に明石の浦に移る源氏。明石の入道の屋敷は都の貴族の館に負けず美しく整えてあり、源氏は快適に過ごす。入道から娘の話を聞かされるが、ここまで来て浮気しては紫の上に面目ない、と関心を示さないよう努めるも…

1.紫の上からの手紙…使者さんお疲れさんです

嵐の中、二条院の紫の上から須磨に手紙が届きます。京でも嵐がひどいらしく、手紙を運んできた使者によると政もままならぬ状態と…

…源氏を想って手紙をしたためる紫の上の情の深さに感じ入りたいところですが、使者可哀想だよ。こんな嵐の中、京から船に乗って(船を出せたことが疑問)、用があるような無いような手紙を命がけで運ばされ… 紫の上も案外、思いやりなくないか。やはり身分社会で、貴族とはそういうものなのか…

とはいえ使者も無事で、源氏からその後いっぱいの「身にあまれる」ご褒美をいただいたそうで。ま、よかったね。

2.明石入道の…煩悩?

明石入道は「僧侶」だと思っていたのですが正確にはどうなんでしょう。入道というのは出家した人のことですね。髪は剃っているだろうけど、お坊さんと言っていいのか?そんなことが気になるのも、煩悩がヤバくないかと感じたからで。

「須磨」の巻で登場した時から娘の「上昇婚」への執念を見せていましたが、今回明石入道が妻と娘と住う屋敷の描写…都の貴族の館に劣らない贅沢で粋な造り…から、ホンマに坊主かいなと(笑)屋敷を美しく整えているのも、おそらく娘の教育と結婚のためでしょう。美しい本物に囲まれた、本物の姫君に育てようという。

そしてまんまと源氏を屋敷に迎えますが、実は当の姫君は屋敷にいません。明石の浦(須磨とは目と鼻の先らしい)も嵐に見舞われ、浜に近い屋敷は危ないということでお嬢様は「岡辺の家」なる別宅に移らせたそう。

入道は仏道修行に大真面目に取り組みながらも、源氏相手に娘の将来が心配だとか愚痴りまくっています。それも作戦だろうけど… 一方で妻にも「源氏美しすぎてヤバい、うちの婿にと思ってたけど、ちょっと高望みだったかな…」なんて弱音を吐いている。

姫君は父親から源氏の様子を逐一詳しく聞いているのでしょう。父の計画を意識しつつも、ますます不釣り合いに思えてちょっと自己嫌悪に陥っちゃてるみたい。この辺、空蝉を思い出します。

ところで明石の君は父親の目を通してですが、源氏を「垣間見て」いるんですね。女性から先に男性を見つけて気に入るパターンって夕顔もそうでした。明石の君は気に入る以前に源氏が眩しすぎて滅入っちゃってるけど。

…そう考えると夕顔って、おっとりしているようで相当いい度胸してたな…比較的低い身分で源氏と不釣り合いながら、まるで劣等感を見せなかった。源典侍もそうでしたが自己肯定感高めの女性たちっていいですね。

3.ここまできて浮気はナイ…とは思う

さて源氏は、明石の姫君に関心を見せません。いや関心あるんだけど、見せないようにしています。京での浮気はほとんど罪悪感なさそうだったけど、さすがに泣いて別れて流れた先で、お互い涙の手紙を交わし合う中での浮気はナイと感じているらしく。その程度の義理は知っているのか。

義理堅く情に厚い男ってことになっている源氏も、女性との関係を始めることに関してだけは盲点になっているようでしたが…

次回も「明石」続きます。明石の君と源氏の関係が始まりそうですが、果たしてどのように…