古文で読む『源氏物語』感想34. 須磨 Ⅲ 〜 明石入道+龍王から狙われてます

本日のあらすじ

京では帝をはじめ、須磨の源氏を恋しがる空気も増し、源氏と手紙をやり取りする者もいたが、弘徽殿大后が釘を刺すやそれも止んでしまう。

須磨から近い明石には明石入道とその妻と娘(明石の君)が暮らしていた。源氏の従者の一人、良清は以前から明石の君に恋文を送っており、近所になったのをチャンスにまた恋文を送るが返事はなし。明石入道は娘を源氏と結婚させようと計画していた。

今は宰相を兼務する三位中将(元・頭中将)が須磨の源氏を訪ねてやってくる。時の権力者たちにどう思われても構わないよと言いつつも、やはり長居はできず互いに別れを惜しむ。

3月、海に出た源氏たちは嵐に遭い、這々の体で住まいに戻って休む。源氏の夢に正体不明の「何か」が現れ、「呼ばれてるのになぜいらっしゃらないのだ」と言う。龍宮からの遣いのようだった。

1.明石ご一家登場

「若紫」の巻の始めのほうで、良清の噂話によって実は紫の上より先に「登場」していた明石の君。と、父親の明石の入道。

今回実物が初登場です。

良清が恋文を送っても返事がない明石の君ですが、おそらく父入道が相手にすることを許さないのでしょう。良清としては身分相応な縁組のつもりでも、明石の入道は娘の縁談にものすごい期待をかけ、「高望み」している様子。源氏が須磨に流れてきたことを知って、この機会を逃してなるかと意気込みます。

すると入道の妻、明石の君の母上は大反対。「たくさん妻のいる人だし、須磨に流れてきたのも帝の妃(表向き女官の朧月夜)に手を出したからだそうじゃありませんか。大体身分違いですよ」と。

それでも入道は「何もご存じないからそうおっしゃいますけどね。とにかく源氏の君を婿にするお心づもりをなさってくださいよ」

夫婦の会話が互いに敬語なのは読んでいてホッとしますね…一夫多妻制だけどな。まあ明石の入道に他に女性はいないんでしょう。

それはそうとここで明石の入道が語るには、源氏の母、桐壺の更衣は明石入道のおじの娘にあたるそう。つまり桐壺更衣と明石入道はいとこ同士、源氏と明石の君ははとこ同士というわけですか。親戚だったのか…

当の明石の君。「このむすめすぐれたるかたちならねど」と作者から紹介されています。…美人ではない?「若紫」の良清によると美人で性格も良いとのことでしたが、まあ良清も直接会ったわけではないからな(でもラブレター出すんだな平安貴族周辺は)。で、決して美人ではないけれど優しく教養のある人だそう。

本人も父親の強迫観念を内面化していて、同等の身分の男と結婚するくらいなら尼になるか海に身を投げるかしてやるという気持ち。一方で自身の身分が高くないことから、父が望むような結婚相手から自分は蔑まれるのだろうとも予想していて、なんとも生きづらそうな感じ……

2.明石を訪れるきっかけは…ストーカー被害?

近いとはいえ源氏が須磨から動く理由もなく、このままでは明石入道の願いも叶いません。入道、良清から娘に恋文が来た機会にちょっと会って話そうかと返事をしますが、どうせ凹まされて帰ることになると正確に予想した良清は行きません。入道、源氏とのつながりを求めて接触を試みるも失敗。

…っていうかラブレター送った相手のお父さんから返事きたらびっくりしちゃうわ。

そんな源氏が明石に来るきっかけは…?

3月1日に上巳の祓とかいう行事があるそうで、よくわからないので説明もできませんが川で禊をする日だそう。須磨の源氏は海で禊をと共と連れ立って出かけるのですが、儀式の途中で嵐が来ます。

その夜、源氏の夢に「そのさまとも見えぬ人」(正体のはっきりしない人)が現れ、

など、宮より召しあるにはまいり給はぬ」(なぜ、宮がお呼びになっているのにいらっしゃらない?)←注釈でも訳を載せてくれないので私訳

と言ってそこらをうろつく(「たどりありく」)ものだから、目が覚めた源氏はすっかり嫌な気持ちに

正体不明のやつが言う「宮」はおそらく海の底、竜宮城の王様でしょう。するとあの嵐は、源氏を見染めた龍王が源氏を引き込もうとして起こしたもの…?怖!

怖いし嫌だし、その「使者」がうろついたこの須磨の住まいが「耐へがたく」なり……

と、いうところで須磨の巻は終了です。

しかしこの源氏の恐怖、すごいわかる。要はストーカー被害に遭ったようなものです。それも相手は超能力を持った人ならぬ存在(手下もいっぱい)…… 。「なんで来ないの?」って……

「なんで」じゃねぇよ!クソLINEか!

さて、次回から「明石」の巻です。