古文で読む『源氏物語』感想33. 須磨 Ⅱ 〜 朧月夜、少女漫画のヒロインみたいよ!

本日のあらすじ

須磨に到着し、居所を整えた源氏一行。落ち着くと源氏は都のあちこちと便りを交わす。伊勢の六条御息所からも便りがある。都では、源氏との密会露見で謹慎中状態だった朧月夜が、右大臣のとりなしで再び参内。帝は彼女の源氏への想いを知りながらも穏やかな気持ちで彼女を愛して、朧月夜についての周囲の悪口も聞く耳を持たず、大切に遇する。

1.三人と同時に恋文交換

流れ者のように須磨についてどんな暮らしを…と思いきやオサレに住まいを整え、場所こそ辺鄙ながら楽に過ごしている源氏。確かに京にいた頃の、何人もの女性と交際してキャーキャー騒がれて宮中では偉そうにできて…なんて暮らしに比べれば落ちぶれたもんです。月を見ても手紙を見ても涙ボロボロにこぼしているし…いや普段からそんな調子じゃなかったっけ?

落ち着いたところで紫の上と手紙を交わし、藤壺と手紙を交わし、朧月夜ともこっそり(朧月夜の女房、中納言の君に宛てた手紙に当人宛のを隠して)手紙を交わし…とりあえず三人に、おそらくほぼ同時に恋文を送っている源氏ですが、これがLINEなら高確率で“事故”りそうだ……

しかもその後伊勢に移った六条御息所、さらには花散里も宛先リストに加わります。花散里は姉の元・麗景殿の女御と暮らしていますが、源氏の援助なしでは屋敷が荒廃するばかり、その件を訴えた手紙のようです。すぐに京の家来に指図して屋敷の修繕にあたらせるマメな源氏。……貧しい女君といえば、末摘花はどうしているのか……手紙に必ず添えなきゃならない和歌作るのも苦手だから、源氏に便りをしたくてもできないでいるのかも(涙)

2.その手紙、人がわざわざ運んで来るのね

LINEなら事故りそうと申しましたが、伊勢の六条御息所から手紙が来ると、源氏が手紙を持ってきた使者をしばしとどめて伊勢の様子を聞くくだりがありまして……

あ、そうか、人が運んで来るんだ!

と気がつきました。。。そりゃそうだ。京での手紙のやりとりだって全部、使者が手で持って宛先まで持っていくんですよね。なんとなくメールみたいにポンッとそこに現れるような気がしてました。そう思うと消息を知らせるコスト(使者にちゃんと払ってるよね?)って現代の比じゃないわけで、徒然なるままに、これといった用件もなく、想いを伝えるためだけに散々手紙を書けるってだけでも、いかにも特権階級だったんですね。

……末摘花が手紙を送れないのはそのせいもあるかもしれない(涙)

3.朱雀帝の株が上がる

さて京では、朧月夜が笑い者になっているようです。笑うところでもない気がしますが(笑)いやむしろ「ヒュー!やるぅ!」と感心しちゃうところでは。帝の寵愛を受けながら当世一の美男とも、って。

それはともかく宮中には出仕しづらいことこの上ない状況でしたが、娘想いの右大臣(ま、アンタが軽率に告げ口するからこんなことになったんですけど)が弘徽殿大后と帝にとりなして再び参内できるように。

そもそも建前として朧月夜は「妃」じゃなくて女官(朧月夜の役職は内侍司の長官)、帝は夫でなくて上司なんですから、私生活で男がいようが関係ないわけで……と帝自身が思い直しています。

…この帝、朱雀帝の株が上がっちゃう。

帝は参内した朧月夜を重用し常にそばに居させます。二人で語り合っては流刑状態の源氏を気の毒がり涙ぐむ帝。自分としては父桐壺院の遺言通り、源氏を重用したかったのだが、母と祖父に逆えず……

朧月夜に対しては優しく「今私が死んだとしても、あなたは源氏の君が京を離れてしまったことほどには悲しまないでしょうね、悔しいな」と。朧月夜が堪えきれず涙すると「さりや、いづれに落つるにか」(ほーら見なさい、どっちのために流す涙ですか)。

この帝も源氏に比べれば地味だけれど、若くてハンサム。私の脳内源氏がレスリー・チャンだとどこかで書いた気がしますが、脳内朱雀帝はチ・ジニですね、『チャングム』の。女と見まごう「ゆゆしい」系の色男じゃないけど、穏和な雰囲気の上品な美男子。そんな美男二人の間で苦悩する朧月夜ですがなんか少女漫画的のヒロインみたいだな。

今の朧月夜は源氏のことしか考えられない。そうは言っても朱雀帝とも肉体関係はあるようで(朱雀帝が朧月夜に「私たちの間に子どもがいなくて寂しいですね」と言うのでちょっと驚いた)。…こちらの関係もNOと言えないが故の不本意なものではないことを願います。

次回も「須磨」続きます。明石入道登場か。