古文で読む『源氏物語』感想30. 賢木 Ⅴ 〜 コキデン禍のステイホーム

本日のあらすじ

出家した中宮藤壺は世間から忘れられたようになり、弘徽殿大后一族の天下で所得も激減。同じく左大臣、源氏、三位中将(前の頭中将)も参内もせずに隠れ暮らしていた。左大臣は辞表を提出(受理はまだ)、三位中将は朝廷の冷遇も気にせず、源氏の屋敷で博士を集めて学問サロンに興じていた。

朧月夜が病気で実家の右大臣邸に里帰りしていた折、病気がよくなるのを見計らって源氏と密会を始める。ある嵐の夜も源氏は朧月夜と共にいたが、翌朝、右大臣に発見されてしまう。そのまま弘徽殿大后の耳へ。激怒した大后はこの期に源氏を失脚させてやろうと思い巡らせる。

1.逆境中のステイホーム

弘徽殿大后一族(というのは藤原氏だそうですが)の天下となり、位階も金も源氏らには巡らなくなってきたようです。もう家に籠るしかないステイホーム状態。

藤壺は出家したのでそれも自然といえばそうですが、今回出家の目的がもう一つ明かされます。

“不義の子”である春宮の“罪”を軽くするために母である自分が仏事に専念するのだということ。春宮に何の罪があるのか……とも思いますが、そういうもんなのかね……

三位中将(頭中将)は弘徽殿大后の妹、四の君と結婚しているため、そちらの一族と言えないこともないのですがいかんせん妻とは不仲、右大臣からもまともに婿扱いされていない様子。(ただし四の君との間の子、二郎は父親はアレでも右大臣の孫ゆえ、行儀見習いに宮中に上がって大事にされているとのこと。)もっぱら源氏の家でステイホームし、源氏と漢詩研究サロンを楽しんでいるようです。

2.逆境に追い討ちをかける密会発覚

朧月夜の里帰りに合わせ、なんと弘徽殿大后も滞在している右大臣邸に何度も忍び込んで密会を重ねる源氏。作者が何度か言及していますが、源氏は「危険な恋」が大好物らしい。父の妃である藤壺との関係しかり。葵上とうまくいかなかったのは、葵上が源氏を気に入らなかったこともあるだろうけれど、「正妻」との関係に今一つ燃えなかったからでしょうか…

さて密会の夜に嵐になり、翌朝、朧月夜の部屋に右大臣が見舞いに来ます。奥に隠れる源氏は元舅の左大臣と右大臣の様子を比べて苦笑い。慎ましく上品な左大臣なら、実の娘の部屋であろうともこんなふうにずかずか入って来はしないだろうと。

慌てて出迎えた朧月夜ですが、衣に源氏の帯が絡まっており、昨夜いちゃつきながら恋の歌かなんかを書きつけた紙まで引っかかってゾロゾロついてきてしまいます。右大臣が「なんですかそれは!」と紙を拾って几帳を開けて「出所」を探ると、そこには艶かしく横たわる源氏の姿。

…大したもんですねこのピンチに起き上がりもしないんだから…

3.右大臣と弘徽殿大后の親子コント

源氏を見つけ、「まあっ!」と怒って部屋を出た右大臣、そのまま弘徽殿大后の元へ行き告げ口します。告げ口ついでに朧月夜がなぜ女御になれなかったかも明かされます(まあ考えればわかることだったけど)。

要は入内前に源氏とできてしまったから、何食わぬ顔で女御にするのも後ろめたく、女官として宮中に上らせたと。でもそのくらいなら源氏を正式な婿にしてもよかったのだが(正妻葵上も亡くなったことだし)、その申し出は断られてしまった。断っておいて密会するとは何事だと。大体源氏は朝顔の斎院にも恋文を送るけしからんやつで…

聞いていた弘徽殿大后、激おこです。何よりこの私が滞在している屋敷に忍び込んで来るなんて、よほどこちらを侮っている証拠だ。自分が後見人となっている春宮の世を心待ちにして、今の帝をも侮っているのだろう…!

話が大きくなってきて右大臣が不安になります。いやそこまで、、まあ、朧月夜はちょっとほら、帝の寵愛に甘えすちゃったのかな?姉のあなたから注意してあげればいいんじゃないですかね。ね?ここは穏便に…

と弘徽殿大后に告げ口したことを後悔する右大臣。じゃ始めから言わなきゃいいじゃん!と思いますが、作者によると右大臣は思ったこと全部ペラペラ喋っちゃう性分だそうです。思慮が足りず、感情のコントロールがうまくできなくて不安を感じると人に投げずにいられないと。

…よく出世できたな?

相当生まれがよいのでしょうか、運がよいのでしょうか…

さあ、どうなる源氏。朧月夜。

親子コントで「賢木」は終了、次回は「花散里」です。