古文で読む『源氏物語』感想24. 葵 Ⅳ 〜喪服の美男をとことん堪能

本日のあらすじ

亡くなった葵上を偲んで、源氏は葵上の兄頭中将、父左大臣と語り、母大宮と文を交わす。この期に普段は返事をくれない片思いの相手である従姉妹・朝顔の姫君とも文を交わし、父桐壺院を訪ねた後、藤壺にも謁見。

左大臣邸では葵上の死はもとより、婿であった源氏が去っていくことを舅姑も女房たちも悲しんでいた。産まれたばかりの葵上と源氏の若君は左大臣邸で育てられるため、源氏は決して縁が切れることはないと皆を慰めるが…

1.葵上付きの女房は3、40人

ちょっと驚いてしまいました。1学級か?左大臣の権勢はちょいちょい表現されていましたが(例えば物の怪に憑かれた葵上のため、当代一の高僧が呼ばれるなど)、葵上付きの女房だけでこの人数。左大臣自身が、右大臣(弘徽殿女御の父)と比べて控えめな人物のように描かれているだけに意外というか。

しかも3、40人がみんなああいう、パーソナルスペース広くならざるを得ない衣装を着けているのだろうから、屋敷の広さはいかばかり…

そんな大勢の女房たちが、葵上との近しさに応じて濃淡のある喪服を着け、心ぼそげに集まって泣いている描写があります。源氏がこの屋敷と疎遠になるのではというのが理由で、左大臣が「大丈夫だよ若君もいるし」と慰めても雰囲気は暗いまま。

私はてっきり職場を失う不安から泣いているのかと思ってましたが、そういうわけでもないのかな。でも葵上亡き後は、その分女手も必要なくなってしまうわけで…心ぼそいですわなあ。中には源氏と関係を持っていた中納言の君も混じっています。その中納言の君は、服喪の間自分に変に声かけて来ない源氏の態度に好感を持っている様子。

里に帰ってまた気が落ち着いたら参上します、という女房も。いつでも戻れる職場なんでしょうか。金持ちの左大臣邸だからこそか。

そういえば『落窪物語』には女房の転職シーン(?)が描かれていましたっけ。

2.美男子の服喪姿はオイシイ…んですね?

それにしても「地味な喪服姿がかえって艶かしい」とか「悲しむ様子がたまらん」的な描写が、少々しつこく感じられるのは私だけでしょうか…いや、これは紫式部先生からしたら明らかに「萌えるところです!」

亡き人を思って悲しむ姿は「夕顔」でも描かれました。当時は源氏もさらに若くて、悲しみ方もより取り乱しがち(落馬しかけた)。そして何より、夕顔の死は隠されただけに源氏は喪服を着ていません。喪服の美男子描写は今回が初めて。そりゃしつこくもなるか!…なるか?

何もこれは紫式部一人の趣味じゃないでしょうね。おそらく当時の愛読者たちにとっても「あはれなる」姿だったはず。

まあ分からないじゃありませんが、改めて思うのはこの時代貴族社会の女性たち…ヨヨと泣く男が好きだったんだなあ!「男は男らしく」=男は泣くな、繊細ぶるな、図太く強くあれ、という美意識には反感しかないつもりだった私ですが、それでも紫式部に比べると全然マッチョ好みかもしれない。

美しく涙する男が美しい。それって結構…いいな!と珍しく素直に感じ入りました。

さて次回で「葵」はおしまい(の予定)。正妻を失った源氏が、紫の上を妻に迎えます。…なんか嫌な予感…