古文で読む『源氏物語』感想17.紅葉賀 I 〜どんだけ美しいんだ源氏

本日のあらすじ

朱雀院行幸に伴う青海波の舞をあり得ないくらい上出来に踊った源氏、異例の昇進(正三位)。紫の上とは相変わらず人形遊びをして過ごす。紫の上のことを聞き及んだ葵上とはますます冷めた関係に。しかし舅の左大臣は源氏と心から厚遇し続ける。藤壺は臨月を迎え、男の子を出産。産後体調が悪く寝込んでいたが、自分が死ねば弘徽殿女御のもの笑いの種になってしまうと気を強く持ち、回復していった。

1.うまく舞って昇進した源氏

どんな時代だろう、とむしろ微笑ましいくらいですが、とにかくあり得ないくらい美しく素晴らしく「青海波」(唐由来の舞だそう)を舞って、従四位下から正三位に異例の昇進をした源氏(なんか『サロメ』を思い出してしまった)。

覗き見していた下々の物まで泣かせ、美しすぎて不吉!と帝があちこちの寺に誦経をさせたほどの舞。ペアで舞うのですが相手は頭中将で、頭中将も並々ならぬ美男子ながら源氏と並んで舞うと「花のかたはらの深山木なり」と完全に引き立て役。

…いや、文学って便利ですね…映画化された源氏物語は観たことがないんですが、こんだけ書かれると俳優のプレッシャーも相当では。こんなこの世のものとも思えぬ美男ってどんな美男よ、ってそうか、この世にいない美男なんですね。

ちなみに私の脳内源氏はレスリー・チャンです。

2.お舅さんたちもメロメロの源氏の魅力

源氏がどれだけ美しいって、葵上の父である左大臣が、ろくに娘のところに寄り付かない婿である源氏を恨みつつも、面と向かうと恨みも吹っ飛んでいそいそ身の回りの世話をせずにいられないほどだそうで。

左大臣邸から新年の宮中の内宴(帝の私宴)に行く準備をする源氏に、珍しい帯を持ってきて手づから付けて、「内宴にこんな素晴らしい帯はもったいなくないですか、もっとかしこまった席に付けて行きますよ」という源氏に「その時はもっといいのを出してあげますから」と、目に入れても痛くないんかいその婿。

さらに、出産のため里邸にいる藤壺を訪ねた際、居合わせた兵部卿の宮(藤壺の兄、紫の上の父)。美しい源氏を女性として見たいくらいだと鑑賞。ちなみにこの時、源氏も兵部卿の宮を「なまめかしくて女性みたい」とつい見とれていました。(前に源氏は兵部卿の宮の容姿を「大したことない」と評していたはずが…)こちらも実は婿と舅の関係ですね。

3.紫の上も一応源氏を夫と認知

人形遊び大好きな紫の上ですが、乳母たちから「いい歳してやめなさい、夫もいるのだから」とたしなめられます。

乳母の少納言は源氏の紫の上への気持ちが軽い気まぐれではと少し疑っていたものの、紫の上の居住スペースをしっかり整え、紫の上の財産管理事務所(政所まんどころ)まで立ち上げた源氏を信頼できるようになったようです。

紫の上はそれで「ああそうか、私夫できたのか」、それも「周囲の女房たちの夫(おじさん)はみんな醜いのに私の夫は美しくて若いんだなあ」と認識。

4.藤壺が弘徽殿に対抗心を持っていたとは

ちょっと意外でした。出産後ふせっていた藤壺が、弘徽殿はじめ世間に笑われてなるかと回復するあたり。

弘徽殿が藤壺に対抗心を燃やすのは分かるんですが(昔の憎きライバル、桐壺の更衣の後釜なわけだし)、藤壺のほうはてっきり弘徽殿が眼中にないものと思っていた…帝の関心は藤壺が独占しているようなものですが、それでも売られたケンカは買う的なもんでしょうか…

というわけで無事生まれた藤壺と源氏の息子、後の冷泉帝でした。

次回も「紅葉賀」です。ちなみにこのタイトルは紅葉の下で行幸と催事があったことから。源氏の人間離れした舞もここで舞われたわけです。