古文で読む『源氏物語』感想16.末摘花 Ⅳ 〜いいことした源氏。

本日のあらすじ

末摘花の屋敷を出ようとすると、朝の光に屋敷の荒廃ぶりがはっきりする。門番の老人と、その娘か孫娘か、若い女性のみすぼらしい姿も気の毒。末摘花の容姿が強烈だったためかえって源氏は忘れられず、またこれも亡くなった末摘花の父宮の導きかとも思われ、その後経済的な援助をする。末摘花からは大輔の命婦を通じて、ダサい衣装と共に初めて自作の下手な和歌が贈られる。年が明けても末摘花を訪ねる源氏。二条院では紫の上に化粧を施して、絵を描いて遊ぶ。末摘花のような女性の絵を描いた後、自分の鼻を赤く染めてみる源氏。「とれなくなっちゃった」と冗談を言って紫の上をからかう。

1.うん、よかったね…

源氏は末摘花に衣装を贈ったりして経済的な援助をしますが、その中に門番の老人の衣装まで含まれていました。

姫のあの様子では、自分以外の他の男だったらすぐに去ってしまうだろう、、と考える源氏。一度関係するとずっと面倒を見続ける(あるいは空蝉に対するようにしつこく忘れずにいる)のは、注釈によると源氏の美点のひとつだそうですが、これまで読む限り唯一の美点ですかね…性格的には。今回はとにかくよかった。

2.紅色が嫌になる源氏

なんだかんだと親切に末摘花と関わって、大輔の命婦とも赤い鼻をネタに冗談言ったりして楽しげに見える源氏ですが、それでも紅い色を見ると嫌になるという一種の軽いトラウマを背負ったようです。姫を嫌いじゃないんだけれど、忘れられないし放っとけないんだけど、会っていない間は特に思い出したくない…

…そういうの分からないでもない(笑)

紫の上が着ている桜襲(さくらがさね。表が白で裏が赤または蘇芳の衣)を見て、「ああ紅色ってこういう心惹かれるものでもあったんだな」と少し気持ちが癒えたりして。

そこまで言われると末摘花が気の毒ですが…

3.下手な和歌の貴重なサンプル

末摘花が一生懸命脳みそ絞って捻り出した和歌が

からころも君がこゝろのつらければ たもとはかくぞそぼちつゝのみ

贈られた源氏が首を傾げる代物でした。和歌を詠まない私にはこれがどのくらい下手でみっともないのかちょっと分からないんですが、これに対して源氏が落書きのように書きつけた

なつかしき色ともなしになににこの すゑつむ花を袖にふれけむ

の、こ慣れてる感じは分かるような気がします。この歌から巻名と、姫の呼び名がついたわけですね。

思えば日本に暮らす現代人のほとんどは、和歌といえばせいぜい百人一首を覚えるくらいで、で、百人一首って膨大な量の和歌の中でも選りすぐりの秀作佳作なわけですよね(紫式部の歌も入ってます。さすが)。下手な歌に触れる機会はそうそうないので、貴重なサンプルと言えましょうかどうでしょうか…

4.天パーも生きづらそうだな…

それでも髪は美しい末摘花。ふと天パーである私がその時代その場所にいたら、どんなあだ名を付けられていたことかと思ったりします。

いや天然パーマの人だっていたでしょうに。それでも貴族の姫だったら長く伸ばして垂らしておかなきゃダメなんでしょうか。そうすると池田理代子の『女帝エカテリーナ』みたいになるのかな。それはそれで見もの…?

さて「末摘花」はこれでおしまい。次回は「紅葉賀(もみじのが)」です。