古文で読む『源氏物語』感想14.末摘花 Ⅰ 〜至って控えめ(当社比)なアプローチ

本日のあらすじ

昨年秋に亡くなった夕顔を忘れられない源氏。現在の通い先である妻の葵上も六条の御息所も打ち解けないタイプで、夕顔のような心を開いてくれる女性を性懲りもなく探している。乳母(の一人)の娘、大輔命婦(たいふのみょうぶ)から故常陸宮の内気な姫君(末摘花)の話を聞き、姫に近づけるよう手引きを頼む。常陸宮邸に忍んで姫の琴の音を聞き、その退出すると自分を尾行する男が。頭中将だった。一緒に左大臣邸に帰り、舅も交えて笛を吹く。葵上のいる御簾の内の女房に琴なども弾かせて遊びつつ、末摘花の琴を思い出す源氏、源氏が執心する相手が気になる頭中将、御簾の内には源氏とかりそめの関係を持った葵上付きの女房、中務(なかつかさ)の君。

1.いまだ軒端荻に時々便りをしているのか。。

紫の上がどうなることかと気にしているんですが、「末摘花」冒頭はまず夕顔と空蝉の追想、そして軒端荻にも時々便りを送っているという話。

軒端荻への手紙は…喜ばれるかもしれないけど夫のいる人に迷惑では…しかもそうこうしている間にも通い先は増える一方の様子で、手紙を書くだけでも大変な手間と時間でしょうが、つくづくこの時代の貴族はマメというかヒマというか。

2.比較的控えめな末摘花へのアプローチ

そんな折に乳兄妹である大輔の命婦から、末摘花の話を聞いた源氏。まだ「末摘花」とは呼ばれませんが、亡くなった常陸宮の姫で、大輔の命婦の父親が常陸宮邸を里宿としていた(どういう関係からかよく分かりません。大輔の命婦の父も皇族の血筋だそうですので、もしや親戚筋?)ことから彼女もそこを里宿としており、姫とも恐らく子ども時代から親しいようです。

まずは内気で琴ばかり相手にしているというその姫君の琴の演奏を聴きたいという源氏にせっつかれ、大輔の命婦は常陸宮邸の自分の部屋にこっそり源氏を入れて、姫の元へ行き琴を弾くよう勧めます。どうも大した腕ではないっぽいのですが、琴自体が相当よいものらしく音はいいみたい。腕前が知れる前に大輔の命婦はなんやかんや言い繕って姫に演奏をやめさせます。

しかしその口実が「あ、今夜私の部屋に客人(男)が来るんでしたわ、待たせちゃ悪いのでこの辺で」って、自由だな。大輔の命婦は源氏の遊び歩きをからかいますが、源氏は「自分こそ!」と返していました。

さて「こんな中途半端に聴かされたって腕前が分かんないよ」とぼやく源氏。むしろ気になっちゃって姫君への関心が高まってますが、大輔の命婦は「いいから今日はこれで帰れ」と追ったてます。なかなかの演出家。これだけ読むと微笑ましいのですが思い出してしまうのは空蝉事件…

空蝉への態度と比べるとこの控えめさ。源氏は「姫君から無礼者と思われちゃいけない」と気にしながらのアプローチ。源氏が多少大人になったから、というよりやはり身分の問題でしょうね。セクハラ性欲どうこうでなく権力に基づくものだとつくづく…

3.“召人”とは、、、

尾行してきた頭中将と左大臣邸に帰る源氏(引っ立てられる形でもなく、頭中将と過ごすことは楽しいよう)。「何尾行してんだよ!」と非難してよいところを、夕顔の件があるため頭中将には強く出ません。夕顔は頭中将のかつての恋人ですが、彼女が源氏と付き合ってたことも亡くなったことも、遺児の行方のことも頭中将は知らず、それゆえ源氏は「をもき功」…自分だけが知っていることを「大手柄」として優越感を持っているという。

…そっちかい。

普通「後ろめたくて」とかじゃないんかいな、とますます源氏を遠くに感じましたとさ。

さらに左大臣邸に源氏の愛人がいると知って頭がクラッと。自分が婿として世話されている屋敷で、妻の侍女と関係するとは。しかも頑張って隠している様子はなくバレていてい、葵上の母などは苦々しく思っていると。

その侍女、中務の君を注釈では源氏の「召人(めしうど)」と言っていました。あんまり詳しく知りたくない感じですがここで言う「召人」とは、仕えている家の主人(格の男)と関係を持つ侍女のことで、古語辞典には「侍妾」とありました。

他に「舞楽に奉仕するために召し出された人」または「囚人」の意味もあります。

そんな単語があるってことは「あるある」ことだったのか…妻と婚家に対する(不)倫理観もさることながら、セクハラ臭のする「あるある」にやはり「平安」と呼ばれる時代の闇を見ました…中務の君の場合は源氏に恋しているようですが(それはそれで「かりそめ」の関係がかわいそう)。ちなみに頭中将も中務の君に懸想しているようです。

さて次回、中務の君…ではなく末摘花を巡って源氏と頭中将がライバル関係に。

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