古文で読む『源氏物語』感想9.若紫 Ⅰ 〜実は先に明石の君が“登場”

本日のあらすじ

わらわ病(高熱の出る流行病の一種)のため加持祈祷をしてくれる僧を訪ねて北の山を訪れた源氏。山桜などを見物しながら共の若者たちから明石の入道とその美しい娘の噂を聞いて興味を惹かれる。夕方、寺の近くのきれいな家を柴垣から覗き、「10歳ばかりの」可愛い女の子に妙に目を惹かれる源氏。密かに想いを寄せる藤壺に似ているからだと気づき、思わず涙。

1.明石の君が先に出ていたのか…

高校卒業した春休みから大学入学後のしばらくをかけて読んだ源氏物語ですが、その前に大和和紀の漫画『あさきゆめみし』を読んでいました。こちらのイメージが一番強く残っていて、いまだ頭中将というと金髪を思い浮かべてしまうわけですが…

今回登場した紫の上、源氏物語の一番重要なヒロインと記憶していますが、彼女が源氏と結婚した後、源氏は朧月夜(異母兄である帝のワンノブ妃。表向きは女官ですが)との情事のため須磨に流され、そこで明石の君と関係を結ぶ、という流れで、

紫の上からしたら泣きっ面に蜂もいいとこじゃ?

泣く泣く別れた源氏が別れた先でさらにけっこう真剣な恋愛をしている、現地でひょんなことから知り合った、急に現れた姫君のために…と『あさきゆめみし』を読んでてしんどい所ではあったのですが…

そうか、明石の君はここである意味紫の上より先に「登場」していたのですね。少なくとも源氏の心には、情報として先に入り込んでいた。

…だから何やって話ですが。

「あ、そうか、お前らある意味因縁があったのか」、とちょっと諦めがつくというか、気が楽に…?う〜〜〜んしかし本当にしんどいなあ、一夫多妻制って。。

源氏から見ればすべて恋愛でしょうが、女性の視点から読んでこれを「ラブストーリー」と言えるだろうか…少なくとも楽しめるだろうか。私はむしろ「女たちの話」として楽しんでいます。源氏を進行役にした女(紫式部)による女たちの物語。恋愛ものとしてはどうにも…

2.「上昇婚できなきゃ海に身を投げろ」

話が先走りましたが、この時点で噂として伝えられる明石の入道。出世できるはずの身分だったものを急に剃髪して僧となり、かといって山に入るでもなく妻子と須磨の海辺の豪邸に暮らしている。

かなりの財力があり、一人娘を大切に育てており、国司(同等の身分)などが心を尽くし求婚してきても相手にしない。娘の結婚には相当期待しており、自分の死後、つまらない結婚しかできそうもなければ海に入りなさいと娘に「遺言」をしておいていると。

そんな話を聞いて「竜宮城のお后になるような娘さんみたいっすね、気位コッワ〜」と笑うその他の共の者たち。ちなみに噂を伝えているのは良清(よしきよ)という従者。

…うん、コワいっすそのお父さん。。。

今見れば毒親と言ってよさそう。きっと娘にそんなムチャを言いながら「あなたのため」と言ってるんだろうなあ。まあ、今のところ噂の段階ですが…

3.紫の上、当時10歳ではない?

その後、近くのきれいな家を垣間見て紫の上を見つける源氏。

「十ばかりにやならむと見えて」とあるように源氏は「10歳くらい?」との印象を持つ紫の上ですが、注釈ではこれは誤解だと。髪型(短め)などもあって幼く見積もったようだが実際はもっと上…というのは尼君(紫の上の祖母)の「あなたのお母さんは10歳(12歳との本もあり)くらいで父親に先立たれたけれど、もっとしっかりして…」的な物言いから、じゃあ目の前のこの子は10よりもっと上だろうとのことか、、あるいは後で年齢がはっきりするのかもしれません。

この時源氏がいくつなのか…高校の古文の授業で17歳くらいと聞いた記憶がありますが、紫の上が12歳くらいとすれば実は思ってたほど歳の差はなかったのか。。しかし32歳と37歳と、12歳と17歳では「歳の差感」が違うというか。

何せそんな幼い子を熱心に覗き見てる源氏キモい、と古文の授業を受けていた16、7歳のころも思ったわけですが(12歳の自分が高校生のお兄さんからじろじろ見られたらと考えるだに気持ち悪いし、当時高校生の自分が小6の男の子を覗き見るとか考えるだに恥ずかしい)、それもこれも恋する藤壺様に似ているからということだそうで。

源氏はその子を藤壺様の代わりにそばに置ければ慰められるなあと、引き取る算段を考え始めたところで終わります。これは空蝉の代わりにその弟の小君を添寝させたのと同じパターンでしょうか。源氏、子どもの敵かお前は…

4.(ちょっと脱線)なんとなくプルースト

源氏が目撃したのは、雀の子が逃げちゃったと泣く紫の上でした。紫の上が捕まえて閉じ込めたのを、子どもの使用人的ないぬきちゃんが逃した。雀は晴れて自由の身になりましたが、今度は紫の上が源氏の「囚われの女」になるのか…

最近読んだからそうなのかもしれませんが、源氏物語を読んでいてなんとなくプルーストの『失われた時を求めて』が思い出されます。これも岩波文庫の新訳が超親切設計でおすすめなんですが…こちらの主人公も他に憧れの歳上の女性がありつつ、慰めにアルベルチーヌという女の子を囲うんですが、そのタイトルが「囚われの女」。そこまで言わなくても…と思わなくもないけれど、主人公は確かに彼女を監視してたりして。

もし源氏物語を源氏の一人称で語り直したら『失われた時を求めて』っぽくなるかもしれません。どうだろう。

次回、若紫の続きです。

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