古文で読む『源氏物語』感想7.夕顔 Ⅱ 〜幽霊より人間が怖いって言う、いつものやつ

本日のあらすじ

六条御息所のもとに通いつつ御息所の侍女にちょっかいも出しつつ、惟光に探らせてついに夕顔とねんごろになった源氏。身分を隠して会っていたけれど、夕顔を自邸(二条院)に迎えようと思うほど好きになっていたある日、気まぐれに人気のない屋敷に夕顔と移動して過ごす。夜中、美女が夢枕に立ち恨み言をのべ、目を覚ますと夕顔が意識もない状態。随身も不足する中、夕顔の傍に夢の女の幻影が見え、そうこうするうちに夕顔は亡くなる。惟光が密かに山寺に遺体を運び弔ってもらう算段をつけ、源氏は涙ながら自邸に戻る。

1.生霊として突然キャラ立ちする六条の人

「夕顔」の巻冒頭で「六条わたりの忍びありきのころ」としてすでに始まっている六条御息所(この時点では単に「六条のあたり」とだけ)との関係。源氏より年上の、いまひとつ打ち解けない女性で、関係が始まってからは源氏もすでに飽き気味のようですが、なれそめも省略されていて読者にはどうも顔が見えません。

むしろその侍女、「中将のおもと」のほうが源氏と歌を交わしてまだ顔が見えるくらい。一体この六条はどういう女性なのか…夕顔を呪い殺した(?)女の霊は六条の生霊なのか…?っていうか、そうだ、と記憶していますが、本文ではまだそのように断定はされていません。

しかしそうだとすると、登場はしていても名前ばかりで存在感の薄い人物が生霊としてキャラ立ちする、って不気味で哀しい。

2.夕顔の死亡フラグ

夕顔との関係成就についても省略されているのですが、庶民的で騒がしい界隈に暮らすおさなげでおっとりした女性であり、頭中将の元恋人(源氏はまだ「そうかもしれない」と疑っている程度。彼との間に娘がいるんですが、一児の母のわりに若い、若いと書かれるのは相当若くして産んだからか、人柄のせいでやたら若く見えるのか…)、とそこそこキャラ立ちしている。むしろ度を越しておっとりした変わり者みたいです。

源氏は彼女を気に入って、自邸に住まわせようか(妻の一人として扱う、ということらしい)とまで思うのですが…というのがすでに死亡フラグっぽい。

夕顔の詠む歌にもフラグは立っていて

山の端の心も知らでゆく月はうはの空にて影や絶えなむ

「山の端」は源氏、自分を月に例えていますが「影や絶えなむ」とは。

そもそも「夕顔」という呼び名自体がいかにも儚げです。

3.あっさりした後片付けが霊より怖い

夕顔の死因はよく分かりません。呪い殺されたようにも見えるけれど、女の霊は源氏の罪悪感が作り出したものとも思えます。ただ人気のない屋敷について来た夕顔の侍女、右近もどうも同じモノを見たような書き方で…やはり本当に出たのでしょうか。

この六条の人はこれからも登場することになりますので、注意して読んでいきたいです。本当に、どういう人なのか。紫式部は彼女に何を背負わせているのか…

それはそうと、夕顔が亡くなってから駆けつけた惟光が、知人の尼さんがいる山寺に夕顔を弔ってもらおうと提案します。夕顔の家にも寄らず。家には夕顔を待つ人たちがいるというのに、噂になって源氏の評判を落としてはいけないからと。

注釈では「やや不自然な設定」としますが、この隠そうと思えばいくらでも隠せるところが怖かったですね…源氏は夕顔を大事に思っており、泣く泣くそうする形ですが、例えばこれが殺人だったら?女性を殺してしまったとしてもこんなふうに処理できてしまうのでは…と怖くなったわけです。

「空蝉」で身分の高い者が低い者にどれほど横暴かを見た後だけに。

若い源氏は立て続けに(相対的に)身分の低い女性と関わって、立て続けに(相対的に)苦い思いをしていますが(相手の女性の方がよほどダメージ大きいけど)、この経験が今後にどう影響するのか…?

4.腕疲れないか?

ところで素性が分からない夕顔を相手にする源氏も源氏で、彼女に対して素性を明かしません。それどころかどうも、ずっと顔を隠している…袖で。前回、牛車の窓から顔を覗かせて夕顔に顔を見られたと書きましたが、源氏はそこで見られたことを意識して、その男と自分とは別人であるかのように振る舞っています。

それで、人気のない屋敷ではじめて顔を見せるんですが。

…ずっと袖で顔を覆ってた?腕疲れないか?真夜中灯りを消してからはしないでしょうが…

あとそれ源氏もおかしいけど、そんな、顔見せない男と付き合い続ける夕顔も相当変わっている。あるいはそれほどまでに、当時の女性には事実上の拒否権がなかったのでしょうか…(空蝉を見てもそう感じる)う〜ん、モヤモヤして気持ち悪い。

と、いったところで次回も「夕顔」の続きです。

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