古文で読む『源氏物語』感想 4. 帚木 Ⅱ 〜源氏、それ性暴力や。

本日のあらすじ

「雨夜の品定め」が続く。「中くらいの身分にいい女がいる」と持論を展開していた頭中将は、そのような女性と関係を持ったのち、彼女が姿を消してしまった(本妻から何か言われていたらしいことは後で知る)ことを語り涙ぐむ。藤式部丞は賢女のつまらなさを語る。雨季が終わり晴れた日に葵上のいる左大臣邸に行くが、方たがえのため左大臣の家来格、紀伊の守(きのかみ)の家へ。夜になって紀伊の守の継母にあたる若い女主人(空蝉)の寝所に忍び込み、無理に関係をもつ源氏。不倫関係ゆえその後手紙も送れないのを悔しがり、空蝉の末弟・小君を自分に仕えさせ、手紙を届けさせるが空蝉からは返事がない。次の方たがえで源氏はまた紀伊の守の家に泊まり、空蝉に逢う気満々だったが、空蝉は拒絶する。仕方なく代わりに(?)小君を添寝させる源氏。

1.それは性暴力だろ源氏。

10代に読んだ時、自分がこの辺をどう感じていたかちょっと思い出せませんが、世の中を知るにつけてフェミニストを自覚して行き今に至ると…

It’s rape!!!

とハッキリ言えますね。空蝉(うつせみ)に対していわゆる「暴行・脅迫」を用いてはいないため、現行刑法の強制性行等罪に問える犯罪ではないものの(これは現行刑法に問題があると考えています、念のため)、身分を悪用したのは明らかな上、空蝉は今でいう「フリーズ状態」になっていたことがうかがえます。

空蝉の寝所に鍵がかかっておらず、源氏が侵入できた不用心を「空蝉の潜在意識からか」と注釈されていましたが、これは「展開に都合悪い人をすぐ殺す」紫式部式のご都合主義かなと。後の空蝉の苦悶と拒絶からしても空蝉が源氏との関係を望んでいたとは考えづらいし、第一そんなセカンドレイプみたいなことは言いたくないのが正直なところ。

2.貴族文化の暗黒面(見たくなかった…)

源氏の暴力的なふるまいで言えばそれ以前に、紀伊の守邸に泊まること自体、相手の都合も聞かずに押し入って接待を(露骨に性接待まで!光源氏よ…)要求していたりして、身分制のイヤな側面を見せつけられた気分。身分の高いもの同士では心遣いの行き届いたやりとりがいとをかし、ってなものですが、下のものにはこうも横暴なのか。

その文脈上に仮にも女主人への性暴力があるわけです。

また身分の話で言うと、空蝉はもともとは今の夫の主人の娘だったのが、家の没落によって家来格の男の後妻に‘身を落とした’という経緯があり、コンプレックスを抱えています。源氏を拒んだのはその劣等感ゆえでもあったし、身分が低くなるとこうも見下されるのかという絶望感もあって。彼女が源氏と関係をもってしまった後で、「もし身分の高い親元にあれば、まだめでたいことでもあったかもしれない」と嘆くのも何とも…不憫の一言。

源氏物語でこれが初の源氏の女性関係描写になるわけですが、いきなりレイプかよ…とドン引きして学生時代に最初に読んだことや『あさきゆめみし』を思い出してみると、むしろこのパターンが多くないか…?光り輝く美貌に加えて身分が全ての時代に皇子に生まれた男の女性との関係に?ちょっと今後注意して読んでいきます。

いや、正直読み続けるのがちょっとイヤにもなりかけてますが、私の記憶では後の方でだいぶ紫式部がフェミ的に悟っていたような気がして。期待してみます。

あと最後に小君(12、3才の可愛らしい少年)を添寝させるのも不穏…

3.雨夜の品定めの役割はこれか

こうなると直前の「雨夜の品定め」、女性蔑視にあふれたホモソーシャルトークの物語上の役割がうっすら見えてきたような。源氏はここで「中くらいの身分の女いいぜ!」な頭中将に毒された形でしょうか。

そんなやつじゃなかったのに、男社会に染まって不本意に暴力的な振る舞いをする男…って現代にもありそうな話です。男性アルコール依存症者の体験談を聞いたことがありますが、「飲めなきゃ男じゃない」雰囲気の会社の飲み会で無理して飲むうちに、ってパターンでした。

4.「夕顔」への伏線

「雨夜の品定め」のもうひとつの役割かと思いますが、頭中将が語った「消えた女」は後に登場する夕顔で、その娘は玉鬘(たまかずら)です。歌の中で幼い娘を「なでしこ」と呼びますが、「なでしこ」「やまとなでしこ」は花の名で、「撫でし子」にかけて子どもを指します。

それが今ではなぜかしとやかな(子どもではない)女性を指している…。

5.「漢字多いとモテないぞ♡」

モテ指南として見る「雨夜の品定め」。藤式部丞は博士の娘である「賢い女」について語りますが、「手紙の字が半分以上漢字とかヤダ」と。とにかく物知り風はイヤなのね。…って優位に立ちたがる男の女性蔑視ですが、こういうモテ指南って現代でもそう進歩してない気がしてため息が。「合コンさしすせそ」もそうだし、「知っていても知らないふりして男を立てろ」ってことですか。いや半分以上に漢字使われてプライドが刺激されるなら、全部漢字の返事を送れよ、藤式部丞。

そういえば前回読んだ「品定め」の中では「細い字がよい」と言ってましたっけ。細いかな文字がよいと。極太毛筆で「夜露死苦!」とかダメか。

帚木(ははきぎ)の巻名は源氏が自分を拒絶する空蝉に送った

ははき木の心を知らで園原の道にあやなくまどひぬるかな

から。「ははき木」は遠くからは見えても近づくと見えなくなる木だそう。

次回から「空蝉」の巻に入ります。

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